孤憤

日朝国交回復

 私は約15分のプレゼンで、現在の世界地図を塗り替え、現在の不穏・不安定な東アジア、あるいは環太平洋、場合によっては、地球規模の安定的平和を期待させるアイディアを持っている。

 作戦名「最初はペー!」北朝鮮と日本の国交回復である。

 おそらく多くの大衆は、この時点で完全に拒否反応を起こしているだろう。

 しかし、北朝鮮を敵視するその考えは、何を根拠としているのか?

 

1 守株

 韓非子「五蠹篇」

 「走って来て木の切り株に当たって気を失ったウサギを見て、運よく獲物にありつけた猟師が、本業そっちのけで、毎日切り株を見張り続けた。」という故事から、古い慣習に固執して、時に応じた物事の処理ができないことを言う。

 

 そもそも、なぜ、こと、北朝鮮のこととなると、大衆は拒否反応を起こすのだろうか?北朝鮮と仲良くして何が悪いのか!みんな考えたことがないのだろうか?

 令和2年内閣府の外交に関する世論調査北朝鮮に関する関心事項」。  

 (https://survey.gov-online.go.jp/r02/r02-gaiko/index.html

 第1位、拉致問題83%、続いて、核開発・ミサイル実験73%。

 昭和の紅白歌合戦の最高視聴率より高い。

 この数値に違和感を感じなくなったら、民主主義国家の国民とは言えない。

 これは、ある国に関する情報が、極端に偏ったものだけ発信されていると言う証左であり、その目的は、通常、その国に対する感情を操作する、 いわゆる、マインドコントロールである。

 

 冷静に考えれば、先の大戦において、散々アジアで大暴れした日本が、最大見積もっても1000人程度の拉致被害者を理由に、貧困と飢餓に苦しむ小国に厳しい経済制裁を課すことにどれほどの正義があると言える?

 

 「気持ちの悪い独裁国家だ。」という意見がある。確かにあのブタ(最近ライザップにでも行っているのか妙に浅黒いが)を見て、なぜ涙を流して喜ばなければならないのか理解しがたい。しかしながら、独裁者などと言うのは、国民の耳目を集中させるFLAG(旗)にすぎない。ハンサムである必要はない。

 そもそも、独裁国家が民主国家に劣ると言うのは、生まれながらにして、十分な人権を尊重されている国家に生まれた者の発想だ。

 全世界の80%が非民主国家である。

 アメリカという、民主国家以外を国家と認めない国があるが、ベトナムイラク、アフガンと悉く民主化に失敗した。

 民主主義は、自由と権利を得るのと、引き換えに国家が抱える問題を自分たちで解決しなければならないと言う責任を負うことになる。これが結構、成熟しきっていない国にとってはハードルが高いのである。

 ましてや、北朝鮮においては「衣食足りて礼節を知る」(管子)レベルである。すなわち、現在の飢餓に苦しむ彼らにとっては、自由も権利も腹の足しにはならない、ブタが「なんとかする!」と言っているのだから、それを崇めている方が解決が早いと、本気で信じているのだ。

 

 「核開発をして、 しょっちゅうミサイル実験をしている。」

 まず、世界に存在する核保有国で、日本が交易していないのは、北朝鮮だけである。

 次に、同じく核を保有するインドを見ればよくわかるのだが、自国民をいくら飢餓で亡くそうとも、軍拡一本槍の戦略が結果的に自国の経済を引き上げ、世界における発言権も強めており、それは、その国の生き残りをかけた立派な国策なのである。そして、21世紀になっても、そのような国策が功を奏すというのが、この世界の悲しい現実なのである。

 ちなみに、ミサイル実験の件だが、明らかに、日本の排他的経済水域EEZ)を意識して外しており、日本列島を跨いだミサイルは、津軽海峡上を通過している。私などには「貴国とは争うつもりは無いのです。いろいろあってやむを得ず実験しています。」と言うメッセージに感じてしまう。

 それなのに、またそれを理由に、5.4兆円も軍事費を増加するという。

 なるほど、これこそが我々の マインドをコントロールしている連中の真の目的か!

 みなさん、いつまでもウサギがぶつかった切り株を見張っていては大変なことになりますよ。切り株が貪欲な武器商人で、ウサギが北方警護を担う救世主なのかもしれませんよ。

 さあ、既存の常識を振り払い、新しいパラダイムにシフトしましょう。

 

2 日朝交渉

 不毛な反朝感情を看破したとは言え、北朝鮮が信用し難く危険な国である事は否めない。どのような条件を設定するかで、彼の国の姿勢が決まり、将来の世界地図も変わって来る。つまり、この条件設定が本稿の肝と言うべきであろう。 

 (1) 国体及び内政には干渉しない。

 当然の話なのだが、この点を明言しておかないと、彼の国にとってはこの部分こそが一番の不安要素なのである。

 日本のように洗練された民主国家から見ると、自分たちの国体はきっと遅れた文化だと判断されると自覚している。その結果、アメリカのように民主化を押し付けられるのではないかと言う疑念を抱く。しかし、日本と言う国は、実はアメリカほど他国の国体に興味がない。宗教にも興味がない。今は気持ち悪がっているが、握手をしてしまえば後は何でも良い。客は客。そういう人種なのである。

 北朝鮮には、意外と交易のある国が存在するが、はっきり言って「国交回復したから私の友好国です。」と宣言できるような呑気な国は日本ぐらいである。

 日朝交渉にあたる外交官には、ぜひこの辺をよく北朝鮮の主導部の方々に意識付けしていただきたいと思う。

 

 (2)  外交ポリシー

・日本国は、 南北朝鮮 の関係について、その国体の性質が既にかなり乖離していることを考えると、近未来的に両国が統一される事は望めないと考えている。

 両国は、それぞれが主権国家として存続し、通常の国家間として国交を樹立して、交流を行うべきだと考える。

 同時に、双方が統一を目的とする戦争はその意義をなくし直ちに終戦すべきである。

米朝関係について、北朝鮮が、良好な関係を継続するのであれば、日本は、アメリカに対し、北朝鮮は我が国の友好国であると主張し、武力的な威圧はもちろんのこと、経済制裁をも非難する。しかし、逆に北朝鮮アメリカ敵視政策については、アメリカの友好国の立場としてこれを非難する。

・日本国は、アメリカ以外とは軍事同盟を結ばない。 また、核兵器については決して領土内に配備する事は無い。ただし日本の安全保障が脅かされた時に、アメリカ及び北朝鮮保有する核兵器がその報復に使われることを否定しない。

 

 (3) 貧困問題の解決

 北朝鮮の貧困問題は、彼の国が核兵器開発によってのみ世界での発言力を得ようとしたきっかけとなったものであり、孤立の要因で有る。しかし、経済制裁を解いたとしても、適法な産業で自立する事は難しい。そこで日本はこの問題を下記の戦略で整理する。

・インフラ整備

 日本国は、北朝鮮の送電網および交通網を中心としたインフラ整備に尽力する。

 この際、現場監督としての技術者は日本人を派遣するが、現場労働者は、相当の対価をもって北朝鮮人を雇用する。 労働者の人選は北朝鮮当局に任せる。

 なお、これらの事業について、専ら北朝鮮主導部により行なわれていると国民に説明することを、日本国は否定しない。

・農業改革

 現在大打撃を受けていると言う北朝鮮の農業事情であるが、決して何の種をまいても全く芽が出ず実らないなどと言う虚しい土地ではない。農業事情の悪化は、やはり労働力不足が原因と考えられる。

 歴史的には、稲作が発展していたようだが、水田・灌漑の上、刈り取りまで時間がかかるので、まずは無農薬(長い戦争で農薬の影響は消えていよう)野菜を量産し、これを販売し、穀物を購入する。日中韓ら隣国は、米等穀物の自給にこだわり過ぎて、野菜不足という情報もある。

 この事業に関わる現場監督・労働者の条件については上に同じとする。

 

(4) 日本国が支払った人件費等について

 日本は、現在予定している国防費の増額分(22年度5.4兆円)、翌期以降5年間で45兆円を削減して、当該北朝鮮支援策に充てる。(武器商人どもめ、ざまあみろ。)

 従って、日本国が労働者に支払った賃金及び農業改革により北朝鮮国民が得た利益について、当人の犯罪行為等を含め、いかなる事情が有ろうとも、北朝鮮国が没収するようなことがある場合は、当該収益の源泉帰属者として日本がこれを回収する。

 ここではっきり言っておく。日本が国費を投じて、(3)のとおり貴国を支援するのは、国民一人一人に富を配付し、「貧困問題」を解決し、北国の不安を拭うがためである。従って、その目的以外の資金の流出はこれを認めない。

 

3 日本のメリット

 さて、ここまでの話を聞いていると、日本は全く大盤振る舞いで何のメリットがあるのかと言う疑問が発生するかもしれない。そこで以下のように整理する。

(1) アジア・日本海の平和・そして南洋へ

 言うまでもない事だが、 日本を中心に日米韓朝(軍事力世界ベストテン入り3国・核保有2国)と言うNATO並みの連合が、 ユーラシア東岸に現れたわけだ。

 取り合えずロシアとは衝突すまい。

 さらにこの枠組みは、南洋にも広がっていく可能性を秘めている。

 現在注目されている「QUAD」(日・米・豪、そしてインドの対中国連携協議)の成否は実は流動的だ。日本以外は、ただ仲良くなる事だけが目的というわけではないように見える。

 特に、インドは面従腹背で、 中国との密接な関係を継続する可能性は否定できない。

 ここで大事になるのが、上記に示した日朝国交樹立案だ。

 日本は、内政には不干渉で、インドの宗教にも興味はない。北朝鮮ほどではないが、対中国の防衛戦を引くためと思えば、インドのインフラ整備にも尽力してくれよう。

 インドもまた、国内に多数の飢餓を抱え、軍拡一本槍だったためにインフラ整備が遅れている。そして大体そういう国は政情が不安定だ。だから、内政には口を出してもらいたくない。と言うことで、彼の国にとって、最高の条件なのだ。

 

(2) 振り撒かれた CIVILIAN SEED

 日本の提示した条件は、北朝鮮という国を富ますのではなく、彼の国の国民一人一人を富ます戦略である。配分しているのは彼の国の主導部という形をとっているので、主導部の人気はさらに上昇し、独裁はさらに続くと考えられるかもしれないが、「衣食足りて礼節を知る」と言うもの。

 一度、まともな人権(相当の対価)と私有財産を与えられたら、何が理不尽で横暴かということにも気づき始める。いわば、CIVILIANのSEEDだ。

 実は、アメリカは悉く失敗した民主化だが、日本は第二次世界大戦において、占領国の各民族に自決権の何たるかを教育し、多くのCIVILIAN SEEDを残した実績がある

 日本としては、ネタバレする前に、インドと同じような契約を結びたいので、あまり急激に育ってもらうと困るのだが、やはり、独裁体制より民主的な国家と付き合いたいものだ。多様な意見を取り入れられない権力は必ず腐敗するからね。

ヨハネス・フェルメール「 マリアとマルタの家のキリスト」

 同時代のオランダで、レンブラントルーベンスを凌ぐ実力を有していたと考えられるにもかかわらず、30数点しか残っていないことで有名なフェルメール

 作品は初期のもので、窓際シリーズに見られる煌めく空気感はまだない。

 この場面は、イエスがマルタとマリアという姉妹の家に招待された時。姉のマルタはもてなすため忙しく働いているのに、妹のマリアは座り込んだままイエスの言葉に耳を傾け、働こうとしない。マリアをなじるマルタに対してイエスはこう言う。「マルタ。あなたは既存の慣習や常識に囚われている。マリアは良い方の選択をしているのだよ。」

 当時のイエスは、既存の権力や概念を破壊するいわゆるゲームチェンジャーだ。

 スティーブ・ジョブスか、マイク・ザッカーバーグが来たようなものよ。もてなし所でもあるまいと言う話だ。

 ありがたいことに。日本のインターネットは情報統制されていない。おかげで 自分が信じている常識を疑ってみたら、簡単に悪巧みをしている連中の存在に気づける。

 にも関わらず、割と皆さん既存の常識を疑わない傾向にある。

 それは、国の抱える問題を自分で解決することをめんどくさがっているからである。

 そこを突いて、蠹(良からぬ事を企む者)が、都合の良い情報だけを大きく広げ、無用な争いをさせてボロ儲けをする。あまりにもばかばかしい。

 私の提案は、あくまで一例に過ぎない。もっと頭の良い人や若い人が本気になれば、もっと上手な軍事費5.4兆円の遣い道も考えられるだろう。